□ 獄寺 隼人
□ お前
今、何処に居る?
昼飯なんだが、10代目とご一緒する約束してただろ。
まさか忘れてる訳じゃねーだろーな?
10代目は、野球バカと購買に行ったまま、まだ帰ってない。
だから、その間にさっさと来やがれ。
(『え、やだなー!獄寺ったら気付いてないの?私、ずっと獄寺の後ろに居るんだけど。』っと!送信!)
しばらく、彼の行動をじーっと眺める。
数秒時間が経つと、あちらで鈍いブーブーという携帯のバイブ音が聞こえた。
それに気が付いたらしく、無防備に放置してあった携帯をめんどくさそうに取る獄寺。
「…………?!ハァアッ!??」
大声でそんな風に叫びながら立ち上がった彼は、がばっと凄まじい勢いで振り返る。
が、此方には気付かないらしく、ぶんぶん首を振って人影を探している。
………なんだか、予想外に面白い。
「チッ……居ねぇじゃねーかよ、あのバカ」
……カッチーン。
ね、ちょっと今の聞いた?
今、私バカ呼ばわりされたわよ?
自分の後ろに人が居るコトにも気が付けないバカに、私バカ扱いされたわ!
しかも、後ろに人が居るコトを伝えられても見付けられない人間にバカって言われたのよ!?
あ゛ーー!
これほどの屈辱が、他にあるかしら!
キーキーと一人でやりきれない思いをぶつけるコトが出来ずに腕をブンブンと振っていると、
「……え、あれ?」
少し目を放した隙に、さっきの場所から獄寺が消えていた。
「……あ、」
急いでスカートのポケットから携帯を出すと、音が出ないように必死に細工した携帯がピカピカと着信の光を放っていた。
パチリと携帯を開くと、『着信 獄寺 隼人』となっている。
少しの間、右のボタンを押すか、左を押すかと考えたが、左側の受話器のボタンを押すコトにした。
「……もしもし」
「お前、今自分の後ろに居るのが誰だか分かるか?」
一瞬、私の携帯ってここまでリアルなサウンドで電話が出来る高性能な物だったかな、とか考えてしまったが事情が違っただけだった。
「……ぅえ!?ご、獄寺?!なんで…」
「10代目の昼食のお誘いを差し置いて、かくれんぼをしようたぁ上等じゃねーか」
先程まで見下げていたハズの、消えてしまった人物が後ろで伏し目で佇んでいて。
パチンと片手で携帯を閉めたその人物は、ズボンのポケットにそれを突っ込む。
「んだぁ!?ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待った!!落ち着いて?ね、獄寺クン、コレには訳が…!」
「んなの、俺にはカンケーねー!10代目というお方に対して、無礼なコトをしようとしていたコトに深く反省しやが ――」
「獄寺が好きなんだヨぉ゛ぉ゛お゛おおお!!!!」
「…!??」
ダイナマイトを両手に、今にもくわえている煙草で火を点けそうだった獄寺の手が、私の爆弾発言におったまげた様子でピタリと止まった。
「……あれ、あ…れれ?」
「お、おま、…いま……今、何て、言いやがった…?」
プルプルと震えている、獄寺の手。
そこからボトボトと、一本二本火を点けそびれたダイナマイトが指先から落ちた。
「ア、貴方ノコトガ、しゅきダカりゃあ…?」
「………それ、武田鉄○だろ……」
「え、や、あの…、そのですねー」
あー。
勢い余って凄いコト口走っちゃったなぁ……。
どうしよ?
「えっと、その…、コレ、実は仕掛けたコトでして…」
「……は?」
「私が獄寺が好きで、なんかよく分かんないけど…ツナくんと山本が協力してくれちゃった…みたいな…感じ?」
「………………」
え、どうしよ。無言だよ?獄寺すっげ無言なんだけど!
「……ッ、あ゛〜…!!そんなコトかよ…っ!」
ボスッと音を立てて地面に座り、頭を抱えた獄寺。
彼からしばらくして発された言葉は、なんだか呆れ返ったような口調だった。
………あ、フラれた?もしかしなくても、フラれた?
「…〜〜〜!!……あ、あのなぁ…!」
「は、はい!」
自分の髪を唸りながらぐしゃぐしゃした後に、獄寺が勢いよく顔を上げた。
…え、顔が赤いんだけど。ね、獄寺の顔赤いんだけど。
照れてんの?もしや。私なんかにビックリ告白されて照れてんの?!ちょ、有り得なくない?!
私なんかの告白で照れるなんて有り得ないよ、獄寺!や、きっと違う!コレは幻覚だ!幻覚だよ、コレは!
「……そういうもんは…、男から言うもんだろ…」
「……へ?」
え、何言ってんの?どうしたの、獄寺。え、ニコチン切れた??
え、え、私、夢見てんのかな?
お昼も食べないで、実は教室で寝ちゃってる?あら、もうやだわー!
「でも、お前がそんな風に思ってたなんて思ってもみなかったから…、意外だった…けどな」
……痛ぇッ!!
「……何してんだ?」
「え、現実か否か確認しようと思いまして」
だけどほっぺ抓ったら痛いんだよ、オカシイだろ?!
それを聞いた獄寺は表情を変えずに、私が抓っていたのの逆のほっぺたをぐいっと抓ってきた。
「いっ、いがっ!いはいいはいいはい、い、は、い゛ぃ゛いいい…っ!!!」
私の反応にぷっと噴き出して私の頬を放した獄寺は、腹を抱えて笑い出す。
そ、そんなに笑うコトないじゃんか…!
素で痛かったんだぞ…!
「わ、悪いっ…つい…!はは…っ!」
ヒーヒー言いながらも、私が半ベソで睨んでいた所為か彼が謝ってきた。
でも…こんな時間が好きなんだよな。不覚にも幸せだと感じてしまう。
話が反れちゃったけど……、
でも、さっきの台詞って獄寺も好きって取っていいのかな?
友達以上恋人未満。
二人にはそんな関係がまだまだ心地がいいようで、
2007.12.1 私たちの一番の似合った位置関係 中條 春瑠
(こんなに長くても名前変換が一切出てこなかったのはきっと、獄寺の所為)